教員・職員の声

野村直樹先生 近況報告(平成28年度発行 瑞桜会会報より)

こんにちは、野村直樹です。
今年の3月で大学を辞めて今はフリーとなり、研究と各地でのセミナーを続けています。

ぼくの1番の仕事は、時間論を前に進めることにあります。
2番目の仕事は、2007年に始めたベイトソンセミナーを全国各地で実施することです。最近の活動では、8月6日に医学部サクラサイドテラスを会場に第50回目のベイトソンセミナーを開催しました。

この回では「ベイトソンセミナー+臨床美術」と題し、お絵かきとベイトソンの「輪郭」についての話を抱き合わせる一風変わったセミナーを開きました。
みなさんは輪郭を描かないで絵を描いたことがありますか?これにはコミュニケーション理論がかかわっているんですね。
ベイトソンセミナーは、社会科学者、臨床家、心理福祉支援領域の人が主に対象ですが、ベイトソンの主著『精神の生態学』(新思索社)をテキストに毎回違う論文を選んで、短いもので3時間、長いもので2日間くらいで実施しています。5人以上集まればこのセミナー、出向きますのでお知らせ下さい。

さて、ぼくの時間論ですが、「E系列の時間」というものです。時計の時間だけが時間じゃない、それはみんな知っていることです。
でも、時計の時間が「本当の」時間だと思っていませんか、あとは個人の感じ方だったり、錯覚だったりと。そんなことはないんですよ。時計を持っていない生物たちがちゃんと1日24時間を計る体内時計を持っていますね。時空をあわせた時計を持っていて、毎年同じ場所で産卵したりします。成人した女性も約1ヶ月弱で周期を持っています。これらが時計じゃなかったら、いったい何なんでしょう。
時計は時間の記号ではなく、時間は時計の記号なのです。わたしたち自身が時計であるし、毎年秋に葉を落とす木々が時計なのです。これらをまとめた時間論については、9月25日に川澄キャンパスのサクラ講堂でお話をしました。

また、ぼくは2001年から看護学部をお借りして「ナラティヴ研究会」という勉強会を続けてきました。
これを2年前に「オープンダイアローグ研究会」と改名して、精神医療における「開かれた対話」を広める勉強会を開いています。

「オープンダイアローグ」とは、まさに開かれた対話のことですが、北欧での精神科医療において革命的な手法として世界から注目される高い治癒率を持つ統合失調症への治療手段です。これが現在日本で広い関心を集め統合失調症のみならず企業も含めあらゆる分野で注目を浴びつつあります。
欧米と比べて遅れているといわれる日本の精神医療を前進させるものとして期待と関心を集めています。
これが実はベイトソンをその源流に持つものだという関係から、この理論的視点の紹介にもあちこち出掛けることが多くなりました。

ベイトソンセミナー、オープンダイアローグ研究会、それとE系列の時間の論文など、ぼくの研究活動とあわせてHPにありますので、よかったらご覧になってみてください。

■野村直樹オフキャンパス研究室
https://nomuraoffcampus.com/

※平成28年度発行 瑞桜会会報に寄稿いただいた文章を掲載しております。

ページの上部へ戻る